2010年6月

  オレはあんまり人間に向いてないから山に行った。
そしたら山も人がいっぱいじゃない!だから人のいない森に入った。
以来、オレのいる風景は森になった。

  昔、この森の先の森を見たくてはやる気持ちを抑えきれずよく走った。
森の万物が時代を物語り、いにしえの風が奥へ奥へと誘って止まない。
おかげでよく転んだ。で、一つ分かった!

― 森の根っこはいい匂いがした 起き上がるのが勿体なくて そのまま寝た
…朝が来た ― (残念ながら巷はそれをソウナンという・・・笑!)

 雨の里帰り  
  この季節、雨が多い。なんたって森が一番歓ぶ季節です。
森で生まれた滴が大地を伝い人里を潤おし、やがて大河となり海に下る。
長旅に疲れた「森の精」は汚れちまった己を清めに雨となって森に帰る。
最初の雨粒がポツンと葉っぱを叩くと森は雨の里帰りに沸き立ち、
木々の吐息と熱気を醸しながら歓びの宴を繰り広げるのです。

  濡れた森がどんなに恍惚に満ちているか!?徐々に葉っぱを、
木立を林床を濡らして行く様には雨と森の安堵感が漂う。
あなたは、その“瞬間の表情”に立ち会う仕合せを逃しちゃいけない!
尚更に、雨に煙る幻映と雨音そして空気の匂い・・・。

  森に辿り着いた雨は大地に染み「戦士の休息」を取る。
染み入る瞬間の連続はやがて細流を成し川を成し、里をくだり街をくだる。
くだるほどに「森の精」は人間の所作と戦いながら傷ついていく。
それでも黙々と疲れきった体を海に運ぶのです。

 森の歩き方 
  この森の夜はどんなんだろう。風のそよぎが闇を鳴らし、
何色の空気がこの森のとばりを包み、何を満たして何を聞かせるのだろう。

   朝な夕な、この森を歩く。日中の折り返しなのに同じ森とは思えない。それは、一刻一秒絶え間なく「生のアリバイ」を刻み続けるから。

  尚更に昨日・今日・明日を歩けば明らかに気配が違う。ここを歩き、佇み、森のエネルギーが全身に降り注ぐのを避ける理由などない。

  月を変えて歩けば幾らすっ呆けようが明らかに森の様子が違う。たまの記憶なんぞ頼りにもならない。けれど森はきっとあなたを記憶する。

  然りて“瞬間の連続”かまびすしく、春夏秋冬この森に入り浸るべし。 この「森」は間違いなく微笑み返す!


   森を歩いてみんしゃい 深呼吸をしてみんしゃい 
大粒の汗を掻いてみんしゃい ハーハー息を切らしてみんしゃい 
覗く空を見てみんしゃい 大きい樹を見てみんしゃい 
小さな草木を見てみんしゃい 繁る葉っぱを見てみんしゃい 
朽木を 枯葉を見てみんしゃい 足元の小花を 果実を見てみんしゃい 
立ち止まり振り返り 今ここに立つ仕合せを探してしてみんしゃい
よけいな物など何もない 「生きて仕合せ、朽ちて仕合せ・・・!」